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スリッページ

すりっぺーじ

注文時に指定した価格と実際の約定価格の差。流動性の薄い時間帯や急変時に拡大し、バックテストとライブの乖離の主因となる

スリッページ (Slippage) は、発注した価格 (指値・逆指値の指定値、あるいは成行注文時の表示レート) と実際に約定した価格の差異を指す。FX 市場は OTC (相対取引) であるためスリッページは構造的に発生しうるものであり、流動性の薄い時間帯や経済指標発表直後に顕著になる。システムトレードではスリッページの想定値をバックテストに組み込まないと、ライブ実績との乖離が大きくなる。

スリッページが発生するメカニズム

FX では注文が発注されてからブローカー (またはリクイディティプロバイダー) が約定を返すまでの間にレートが変動すると、スリッページが生じる。成行注文では常に発生する可能性があり、逆指値 (ストップ注文) も指定価格を超えて約定する場合がある。原因は主に 3 つ: (1) ネットワーク遅延による注文到達のラグ、(2) レートのギャップ (窓開け)、(3) 板の薄さ (流動性不足) である。特に月曜朝のマーケットオープンや、NFP (米雇用統計)・FOMC 結果発表直後はスリッページが通常の数倍に拡大することがある。

バックテストへのスリッページ反映

バックテストで「約定価格 = エントリーシグナル発生時の終値」と仮定すると、ライブで平均 0.5 pips のスリッページが片道で発生する場合、往復 1.0 pips × 年間 200 取引 = 200 pips のコストを無視していることになる。USD/JPY を 10,000 通貨で取引するなら年間 2 万円、100,000 通貨なら 20 万円の見落としに相当する。実務的な対処は (1) 片道 0.5〜1.0 pips の固定スリッページを加算する保守的アプローチ、(2) ヒストリカルなティックデータの bid-ask 中値からスプレッドとスリッページを実測して反映する精密アプローチ の 2 種がある。

スリッページを低減する設計上の工夫

完全にゼロにはできないが、低減する方法はある。第一に、流動性の高い時間帯 (ロンドン〜NY オーバーラップ、日本時間 21:00〜翌 2:00) に執行を集中させる。第二に、成行注文ではなく指値注文を使い、自分が流動性を提供する側 (メイカー) に回る。第三に、発注サイズを小さく分割し、板を食いすぎない。第四に、経済指標の発表スケジュールを API で取得し、発表前後 N 分は発注をブロックする Pre-trade Guard を設ける。これらの設計はスリッページのみならずスプレッド拡大リスクの軽減にも寄与する。